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SIerとWeb屋のチーム構成戦略:スケールアウトとスケールアップ

ふと思いついたたとえ。

SIerを請負開発会社、Web屋を(Webに限らず)ソフトウェアの事業を持ってる会社と単純化して考える。双方とも業務でソフトウェア開発を行う点では共通しているが、異なるのは「開発したソフトウェアが自分のものか、他人のものか」という点である。

SIerはスケールアウト

彼らが開発したソフトは基本的に他人(顧客)のものである。彼らは概して開発したソフトの価値ではなく労働時間を基準として対価を得る。いわゆる人月だ。

ここにあるプロジェクトがあって、人月100万の社員が参画していたとする。このプロジェクトの売上を伸ばしたいとしよう。どうしたらよいだろうか。

1つは、社員がより技術を研鑽して価値を高め、単価を上げてもらう戦略だ。すぐ思いつくが、この戦略は限界が早い。一般に顧客はそんな大幅な単価アップを容認しないためだ。せいぜい5%〜10%、20%も上がればかなり良い方なのではないか。この例ではどんなに頑張っても20万程度しか上がらないことになる。また、その前提として社員自身は相当頑張ってもらわないといけない。頑張れるかどうかは人に依存するので確実性が低い。

2つめは、単価はそのままに労働時間を増やす戦略だ(戦略という言葉を使うのも気が引けるが…)。作業効率を落とし、ムダな残業を増やせばそれに比例して労働時間が増え、(契約形態によっては当てはまらないが)時間に比例する売上も増える。この方法も限界が早く、どんなにムダに残業したところで20h〜40h/月の積み増しがいいところだろう。人月100万は月160hとして時間単価6250円なので、6250 x 40 = 25万がいいところ。更には残業により社員が疲弊し、顧客満足も低下しがちで、結局あまり幸せにはなれない。

3つめが人を増やすことだ。仮に新人を普通の社員の半分の単価で参加させたとすると、一気に50万増える。同じクラスの社員がもう一人増えれば100万である。これはすごい。教育コストや、人数を増やすための理由が必要であったりはするが、他の方法と比べて限界が高いので伸びしろがある。

かくしてSIerの本命は人を増やすことになる。教育コストを圧縮するために開発規約を標準化して、自由度は減り、有象無象の人員が増え…というおなじみの風景ができあがるわけが、ここで考えたいのはチームの構成戦略。担当1人あたりの能力を伸ばすのではなく、なるべく普通の人をたくさん束ねて仕事をする戦略で、要はこれはスケールアウトだなと思う。

Web屋はスケールアップ

ソフトウェアの事業を持ってる会社は、基本的に自社のソフトを開発し、そのソフトが持っている価値で勝負する。

はてなブックマークが仮に年に1億円売上に貢献するとして、それをより増やすにはどうしたらよいか。基本的には、より儲かる方法を考えて、より儲かる機能を実装するという方向になるだろう。そのためには有象無象ではなく頭がよく能力の高い人材がいた方が良い。逆に、労働時間や社員の数はソフトの価値とは無関係なので、少なければ少ないほどコストが抑えられて良い。

小さなチーム、大きな仕事ピザ2枚のチームは、このような前提で成り立っている。これは普通の人を多数束ねて仕事をするSIerと対照的で、個々人の能力を最大限伸ばしていこうとする戦略。つまりスケールアップだということができる。

結論

スケールアップとスケールアウト、どちらが良いというつもりはないのでここまで。多分意識の高い人はスケールアップ型になると思うけれど、自前で事業を持つことは(ビジネスの面でも、個人の能力でも)生存競争が激しいので、一概には言えないと思う。