auientの日常

ノンジャンルで書きたいことを書くブログ

自分の見た客先常駐

はてブで人月い件が話題になってたので、自分のケースを書いてみようと思う。

anond.hatelabo.jp

www.orangeitems.com

ossan.hatenablog.com

軽く自己紹介しておくと、自分は大手メーカー系の子孫会社SIerで10年ほど泥仕事をしていた人間である。請負に準委任、派遣、自社案件、なんでもござれ。ただし最後の常駐先ガチャで安定してよい仕事をできるところを引き、スキルを積んだ結果去年web屋に転職した。そういう意味では常駐肯定派、強いSEの一部である。

その話はさておき。

SESの実態についての肌感

当時の会社のポジションは概ね2次〜3次受けで、自分は係長(リーダー)クラスになっていたので、上の会社とも下の会社とも話す立場であった。その感覚から言うと元増田もid:orangeitems氏もid:dbfireball氏もみんなそれぞれ自分の経験に正直に書いているんだなあと思う。少なくとも嘘はないんじゃないかな。元増田は下流の方、orangeitems氏は上の方だなというのはあるけど。*1

一概に「仕事とはなんであるか」を言えないように、SESという形態をとってみてもピンからキリまである。アタリもハズレもある。その中で、まあ一般論として言えるかな、という話をいくつかあげてみよう。

受託開発なら法律は知っておけ

自分の会社はそれなりのブランド看板を背負ってたのでコンプラには相当厳しかった。おかげで労働関係の法律についての教育を受ける機会が度々あり、ちゃんとした知識を得られた。ちっちゃい会社で社長が営業して仕事ぶん回してるところじゃこうは行かないだろう。

受託開発するもの、法律を知るべきである。なぜか。それが法律だからである。自分の立ち位置を決めるものだからである。少なくとも請負・準委任・派遣の違いを把握することは最低限のラインだと言える。

明確な違いポイントの1つに「直接指揮命令するか」というのがある。SESで客先で仕事してるとき、アホな客がカジュアルに作業指示出してくるケースがあり「あっこれ指揮命令かな?」と思ったりする。違法か適法かの境目なんて案外そんなもんだったりする。

上下の会社と関係を良好に保ち売上に責任を持つ立場としては些細なことでいちいち波風を立てないが、末端で作業している諸君。君が今日受けた作業指示は違法かも知れないんだぞ。それがまず分かるようになれ。

ちゃんと調べていくと派遣法まわりはマジで頭のおかしい法律だというのがよく分かる。自分はずっと気になっているんだが、「労働契約申込みみなし制度*2」って誰か有効活用した人いるんですかね? 事例があったらぜひ教えてほしい。

受託開発なら自分の単価は把握しておけ

ITエンジニアは技術を磨いてなんぼ、という風潮がある*3。それはそれでいいんだが、受託開発している諸君。君らのスキルは、君の1人月に金を出す客がいないと1円の金にもならないことを理解しているか? ビジネスモデルを説明できるか?

今までに「面談」した多くのエンジニアは、自分の単価に興味を持つ人がとても少なかった。上司や営業の方針で単価を教えてないケースもあるだろう。だがあえて聞いてみてほしい。「自分の単価っていくらなんすかねえ?」と。

単価は=自分の評価額であり、自分が働いて出すべき価値の指標になる。そして何より、単価以上の給料・ボーナスがもらえることは絶対にないのである。受託で儲けようとすると、自分以下の人間(自社・他社問わず)をまとめてどーんと売上を上げて行く必要があるが*4、そういう一歩進んだポジションも担えますよ?というアピールにもなる。1人月しか売上を上げられない人間と、部下4人つけて5人月いける人間では、当然後者の方が上司の評価も給料も良くなるものだ。

ちなみにミルフィーユのような多重下請け構造の中にいると、自分より上の会社の単価は(普通は)知ることができない。もし何かの拍子に知ったとしたら、驚き、怒りを覚えるだろう。マージン抜いた会社は、少なくともマージン分は何かしら価値を提供して然るべきであるが、不思議なことに一人の担当者も置かずマージンだけ吸い取る会社がある。こういう会社を避けるためにミルフィーユはできるだけ薄い方が良いだろう。とはいえ、ミルフィーユの厚さを事前に測る方法はほぼないのであるが。

なぜSESが必要とされるのか

ここまでSESでの受託開発について書いてきた。リアル10年泥をやってみて感じるのは、「なぜこのような形態の仕事が必要とされているのだろうか?」という疑問だ。

自分の理解では「日本の解雇規制が強すぎて正社員だけでは需要の伸び縮みに対応できないから」という理由が一番説得力を持っている。システム開発の仕事は、そもそもがプロジェクト型(1回っきり)のケースが多く、需要に波がある*5。これを正社員で賄おうとすると、閑散期に社員を解雇できないので固定費の負担が重くなりすぎる。EC2のインスタンスが遊んでたら落とすの当たり前だよね?それができないとどうなる?

このポジションを埋めるのが本来は派遣の役割だったのかもしれないが、やっぱり正社員信仰のせいか政治的な問題が強すぎて、使役側からすると非常に使い勝手の悪い制度になっている。5年ルールとか、労務管理義務とか。

そこで都合の悪い現実への適応として選択されているのがSESなのではないだろうか。だから、実際は商流無視して指揮命令が横行して実質派遣じゃん、みたいなことになる。それは求められているのが「指揮命令可能・労務管理不要・需要の変化にフィットする、派遣」だからじゃないだろうか。

じゃあどうしたらいいの論でいえば、解雇規制撤廃すればーという話になるが、それも一概に良いと言えない。だって単に廃止するだけじゃ経営側が強くなりすぎるから。あってもいいかなーと思うケースは、年金など社会保障制度改革でBI導入するのと同時に規制緩和するやつ。ただ、クソ自民は論外として枝野にもできると思えない。

どうにかなんないですかね。

まとめ

自分の感覚に基づいた根拠レスな記事を書いた。とはいえ法律は根拠がある。みんな法律と単価を知ろう。きっとそれが自立につながるはずだ。

あと、理不尽に見える現状にもそれに至る理由があるだ。ビジネスの形であったり、法体系であったり。それを考えていく必要があると思う。

参考:過去に書いた人月い話

 

*1:境遇、誤字が多くて気にしない風の増田。派遣法の教育をちゃんと受けてるorangeitems氏、あたりから読み取れる

*2:違法派遣状態になると問答無用で正社員入社できるというすごいルール。ググると邪悪企業パソナのページがtop hitなのでリンクしない

*3: はてなブックマーク - ITエンジニア採用に欠かせない原則とは (1/5):IT人材ラボ

*4:ちなみにこのポジションの人間を奴隷頭という。自分も奴隷頭だった

*5:そんなことはない、継続して改善していくものだというイケイケweb屋のあなた。世の中を見渡してください